紀行文「①日光」
「そうだ日光へ、行こう。」
先々週の木曜のランチタイム。
職場の先輩と雑談をしていた。なぜか日光の話題になった。
そして、なぜか、僕は休日に日光へ行くことを宣言した。
日曜日がきた。
気持ちが乗らない。日光行くのめんどくさく感じた。
こういった感情は、よくある。
例えば、友人と旅行の約束をかなり前からしていて、いざその日が近づくと急に行く気が失せる。
僕は旅行やイベントがあるとき、ほぼ100%この感情が発動する。なぜか分からない。
しかし、チケットを買ってる以上行くしかないと思い、家を出た。
新宿駅についた。
駅弁とドトールのコーヒーを買って、東武日光行きの「日光1号」に乗り込んだ。
車内には、1割くらいしか乗客はおらず、老夫婦か、ひとり旅のおじさんが数人いた。
ふと、高校生の頃を思い出す。当時、「ひとり旅」は、格好いい大人のする事だと、妄想を抱いていた。
しかし、いざやってみると、特別格好いい事ではない。「こんなもの、か」と思う。年を積むにつれて、昔憧れていた事が当たり前のように出来るようになる。そこに、感動はない。
僕は、車窓からの景色をみながら、無意識に湧いてくるとりとめない考えを一つずつ処理した。
20分くらい経つと、絞りきった水雑巾のように、考え事が無くなったので、駅弁を食べることにした。
車内で食べる駅弁は、特別旨かった。
別に、あわび、うに、和牛といった豪華食材が使われている訳でもない。
卵焼き、唐揚げ、人参の煮物、、、、普段、特別輝いてもいない食材達は、駅弁の箱に包まれると輝きを取り戻す。まるで、スッピンだと普通の女性が、メイクとお気に入りの服を着ると、美と自信を取り戻すように。
時速100km/hを超えて走る電車の車内は、ゆったりとした時間が流れる。
日々の生活では、意識しても獲得できない「リラックス」が、ここでは容易に手にする事ができる。
いつもより長い2時間をすごし、「東武日光駅」に着いた。
東武日光駅は、標高500mに位置し、深呼吸すると肺にまで冷気を感じる事ができた。
僕は、日光東照宮行きのバスに乗った。
~続く
ではでは