basyouu’s diary

さあ、これからです。

高校生の時、ファッション業界に革命がおこった事について

ファッション

 

ファッションとは、その人の個性、価値観、生き方、権力を表現し、他者と区別する記号である。

 

そして、人は人と違うファッションをすることで、自らのアイデンティティーを示す。

しかし、時として、人と違うことを求めるあまり、逆に人と同じような服装になっているのも多く見かける。

 

しかし、一般人が陥りやすいこのジレンマをもろともせず、圧倒的個性をファッションで表現した人物がいる。

 

 

 

 

 

それは、僕が高校3年生の時に同じクラスだった同級生の加藤君だ。

 

彼は、身長160㎝体重80㎏ベンチプレス100kgオーバーのスーパーゴリマッチョの「人間戦車」という名がふさわしいラグビー部の童貞であった。

 

 

彼の趣味はAV観賞であり、英語の授業中に持参した小型PCを持って、一時間トイレにこもることもあった。

 

また、いきつけの「大人のお店」においては、購入金額10万円以上を越え、大人顔負けの大人買いを、若干18才でありながら習得していた。

 

AVをこよなく愛す彼が、クラスメイトに貸した「バコバコバスツアー」のDVDに、陰毛が一本挟まって返却された時に、彼が激怒したのは想像に難くない。

 

 

加藤くんのエロへの執着する姿勢は、本題と関係がないので、一旦忘れて頂きたい。

 

 

 

 

 

 

 事件が起きたのは、高校3年生のとき、大学受験を備えた模擬試験会場でのこと。

 

模試の会場地は、都市部の大学や予備校で行われることが一般的であった。

 

我々は愛知県の高校に通っており、模試の会場は名古屋駅前の河合塾であった。

 

模試は、土曜日に行われるため、私服で受験する高校生も数多くいた。

 

多くの男子高校生は、「名古屋」というおしゃれヒエラルキーの高い地を意識し、彼らなりの一張羅を羽織り、他校の女子生徒を意識しつつ、背筋を伸ばしながら「我ここにあり」といったどや顔で模試会場にやって来る。

 

 

 

そんな中、加藤君が名古屋駅の改札から現れたとき事件が起きた。

それは、スティーブ・ジョブズが初代iPhoneのプレゼン発表時の「電話を再発明した」と言ったくらいの衝撃であった。

 

 

加藤君は、学校指定の半袖の夏服に、ズボン、足元は、学校の室内用の「加藤」と名前が入った緑スリッパで名古屋駅の改札から現れた。

 

そして、彼が着用していたスリッパは下のクッション部分が無く、厚さ3mm程度の薄皮のみであり、足の皮膚と地面の接触を防ぐ防護シート程度の機能しか果たしておらず、歩く感覚はほぼ素足に近いことが、容易に想像された。

 

 

 

 

 

 

 

まず、衝撃だったのが室内ばきのスリッパをあえて名古屋という洗練された土地に履いてくることだ。

 

ファッションの世界では、一般的にTPOが大事と言われる。(Time:時間 Place:場所 Occasion:場合)

簡単にいうと、時間や場所、場合に応じて適した服装をすることだ。

 

 

 

しかし、彼はTPOという概念には目もくれず、学校の緑のスリッパを、履いてきたのだ。

 

多くのファッションデザイナーがデザイナー同士、差別化を図るため、生き残るため競争を余儀なくされる。

そこで勝ち残れるのは、ココ・シャネル、クリストフ・ルメール、ジル・スチュアートといった極一部の天才達だ。

残りは資本主義社会において、競争に負け、やがて疲弊し淘汰される運命にある。非常に厳しい世界だ。

 

 

 

 

加藤君は、そんな厳しいファッション業界において、「デザイン」市場に残されたパイはほぼ無いと冷静に分析し、そして「TPO」という概念に着目し、緑のスリッパを用いることで見事なブルー・オーシャン戦略を成し遂げた。

それは、昨今、大企業が抱えるイノベーションのジレンマを解決する先鋭的な事例でもあったかもしれない。

 

 

また、Instagramにいるモデル気取りのインフルエンサーよりも、圧倒的な影響力を名古屋の地に轟かせた。

 

FaceBookのマック・ザッカーバーグ、アップルのスティーブ・ジョブズ、テスラのイーロン・マスクより先に、彼はファッション業界において、革命と名声を手にいれようとしていた。

 

 

 

そんな革命的な出来事を自らが興している最中だと、全く気づいていない様子の加藤君は、僕達に「おはよう」といった。

 

 

 

そして、僕はなぜ外用のスニーカーを履いてこなかったかと聞いてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「前日にスリッパでそのまま帰宅してしまった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キタクシテシマッタ☆?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼は、今確かに「キタクシテシマッタ」と言った。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シテシマッタという言葉には、少なからず意図的ではなかった。気付かずにやってしまった。という意味が含まれている。

そんな事がおこりうるのだろうか?

 

 

 下駄箱を通ったとき、何か感じなかったのだろうか?まさかのスルー?

サッカーの元イタリア代表のアンドレア・ピルロ並みの華麗なスルーをしたとでもいうのか?

彼は、ピルロなのか?

 

 

アスファルトを歩いているとき、地面の質感がいつもと違うことに気づかなかったのだろうか?

彼の厚さ3mmのスリッパであれば、地面の質感に対する感度は、一般人の約63倍以上はあり、学校の廊下とアスファルトの差違に気づかない可能性は極めて少ない。

いや、待てよ。彼の足裏の皮膚が象なみに固いため、地面の質感を感じづらくなっていた可能性もある。

彼は象なのか?

 

 

それとも、彼の両親はアメリカ人で、外用の靴のまま家で過ごす環境で育てられたため、外用と中用の靴という概念がそもそもないのか?

 

 

 

 彼はアメリカ人で足だけ象の特徴を持ったピルロ風のゴリマッチョのチェリーボーイなのか?

 

 

 

 

 

 

様々な憶測が脳裏をかけめぐり、僕は、目の前の加藤君が本当に加藤くんなのかわからないパニック状態に陥った。

 

 

 

 

 

しかし、何度確認しても目の前にいたのは、確かにいつもの加藤くんであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も、加藤君は学校で様々な革命的な出来事をやってのけた。

常に彼、クラスのヒーローであった。

 

 

 

 

 

そして、高校を卒業し、我々は大学生になった。

 

ちょうどその頃、ファッション業界では、NIKEの「ベナッシ」というスリッパがトレンドになり、多くの若者の中で流行った。

 

 

 

 
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これも、加藤君の仕業なのか。

 

 

 

 

 

 

 

真相はわからない。

 

 

 

 

 

ではでは。